仲間と一緒に宇宙へ挑む、投資という行為の真髄 -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.5-

Rheos Now

「ひふみフォーラム in 十勝」、最後のゲストは、インターステラテクノロジズ株式会社代表取締役社長の稲川貴大さんです。

4月28日に大樹町で打ち上げを予定している観測ロケット「MOMO」2号機に、レオス・キャピタルワークスが支援しており、マスコットキャクターの「ひふみろ」が描かれたロケットが宇宙に飛び立つ予定です。

前回まで:
十勝にある「投資文化」を共有したい -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.1-
新たな挑戦を生み出し続ける、十勝という地域の力 -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.2 -
好きなことと儲かることが一体化する時代 -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.3 -
まちづくりの仕掛け人が語る、場所に宿る意思とは -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.4-

いよいよ僕の話だよ…!
「十勝から宇宙」を目指す稲川さんに、ロケット事業と4月の打ち上げに向けた思いをお話いただきました!(ゲストライター:神宮司亜沙美さん)

【登壇者プロフィール】
稲川 貴大(いながわ たかひろ)
東京工業大学在学中に鳥人間コンテストに出場し、人力飛行機チームの全体設計を担当。大学院終了後は小型ロケット開発会社であるインターステラテクノロジズ社に入社、2014年に代表取締役に就任。現在は経営と、技術面では主にシステム設計・制御系設計を担当している。

インターステラテクノロジズ社は北海道大樹町を拠点として、誰もが行ける宇宙を目指し、シンプルで低コストなロケットの開発を行なっている。2017年7月に行なった観測ロケット「MOMO」初号機は日本初の民間打ち上げロケットとして注目を集めた。4月28日に大樹町で打ち上げを予定している観測ロケット「MOMO」2号機にレオス・キャピタルワークスが支援しており、マスコットキャクターの「ひふみろ」が描かれたロケットが宇宙に飛び立つ予定。

好きなことにとことんハマり、ロケットと出会う

経営者でもありながら、技術面ではエンジニアとしてシステム設計などをバリバリこなす稲川さん。実は鳥人間コンテスト界では伝説の人。人力飛行チームの全体設計を担当していた際、その卓越した設計ノウハウを惜しみなく公開し、尊敬と親しみの意を込め「いな様」と呼ばれています。

そんな稲川さんですが、学生のころからものづくりに興味があったと言います。


稲川さん:
高校のときには木工にすごくハマって。高校生なのに家具づくりをずっとやっていました。自分の作った木工の椅子を美術の大会にだして、インターハイにいってしまったほどです。

そのあとはもうちょっと新しいこと、未来のことをやりたいなと思って工学系の大学に進み、鳥人間という人力飛行機を設計して飛ばすということをやってたんですね。

そのころはまだ宇宙に興味はなかったんですが、大学の研究室と連携して町工場でロケットを作っていることを知り、衝撃を受けました。「あ、自分で宇宙開発ができるんだ」と。それから自分でサークルを作って小さいロケットを作って打ち上げるっていうことをやって、いまインターステラテクノロジズで大きなロケットを打ち上げることにつながっています。


このフォーラムでは、「好きなことをやる」ということが一つのキーワードとして登場してきましたが、稲川さんも例外に漏れず、好きなことにハマり続けて人生を歩んできた方なのだと感じました。

目指すのは低コストな宇宙への輸送業

2017年7月のMOMO初号機の打ち上げはとても話題になりましたが、インターステラテクノロジズが取り組んでいるのは、宇宙開発の産業化。その先には明確に見据える事業があります。


稲川さん:
我々がやっていることとしては輸送業です。荷物をお預かりして、宇宙までお運びする仕事です。

すでにあるH-ⅡAロケットはビル30階建てくらいの大きさで、打ち上げに100億円くらいかかると言われています。登場時は非常に安いロケットができたと言われたイプシロンロケットで40億円くらい。

我々はもう一桁下げ、数億円で打ち上げられる安いロケットを開発し、人工衛星を宇宙まで運ぶことが目標です。


インターステラテクノロジズのロケットは構造を非常にシンプルにし、汎用的な部品を使い、内製率を高くすることでコストダウンを図っています。専用の設計や宇宙用の特別な部品を多用するのではなく、一般的に調達が容易な部品や技術を使って設計することで、非常に安いロケットが実現できているのだとか。

人工衛星にならないロケットであれば、数千万円で打ち上げることが可能なのだそうです。

仲間と一緒に挑む、リベンジ戦の2号機

〝技術の民主化〟に昔から興味があったという稲川さん。鳥人間のころから、ノウハウをオープンにしてきたことで知られていますが、インターステラテクノロジズのロケット開発も、技術の民主化という思想がとても色濃く反映されています。

民間企業単独では日本初の、宇宙圏に到達するロケット「MOMO」。2017年7月に打ち上げ実験を行なった初号機では、クラウドファンディングで打ち上げ費用の支援を募り、735名から総額2700万円を集めました。さらに4月に打ち上げを予定している2号機では、初号機を超える924名の方から総額2842万円が集まったのです。


稲川さん:
2号機では、「今度こそ宇宙へ」というチャレンジの仲間になりませんか?という呼びかけをしました。一般的なリターンで何か商品をお渡ししますというプロジェクトではないんですね。

仲間になりませんか?というプロジェクトでこれだけ大きな金額を集めたというのは非常に珍しい例だと思っています。

仲間というキーワードで考えたときに、十勝の大樹町に開発拠点を置くことについても理由があるのです。MOMO初号機も2号機も、実は打ち上げ自体が実験。民間企業単独で低コストのロケット開発に挑むというのはそう簡単なことではありません。

大きな挑戦だと思っています。非常に難しいです。

でも難しいのは当たり前で、だからこそ我々ベンチャー企業として、実験を繰り返せる環境というのはとても大事なんです。MOMOは打ち上げ自体が実験なわけですけれども、こういうことが大きなも支障なくできる、これが大樹町にいる大きな理由です。

世界中探しても、これほど実験がやりやすい環境はそうないはずです。


インターステラテクノロジズが拠点をおく大樹町は、東と南の海が開けているという、小型の人工衛星の打ち上げに適した立地であることはもちろんですが、周囲の方の協力も含めたその実験環境の良さがあるのだという稲川さん。

立地という場所が持つ本来の価値に、人という価値がプラスされて圧倒的な価値になる。十勝の大樹町で行われているロケット開発は、まさにその代表的な事例のように思いました。

日本の宇宙開発を、産業に育てていく

世界で一番宇宙開発が活発なアメリカで、民間でロケットを打ち上げられるように法改正がされたのが1984年。今から30年前ほど前のことでした。PayPalやテスラ・モーターズの創業者であるイーロン・マスクや、Amazon創業者のジェフ・ベソスなど、民間企業のロケット開発が盛んに行われている今があるのは、30年前の国策がようやく花開いている結果なのだと言います。

日本では2016年に、アメリカから30年遅れて法律が成立。これまでは国が主導となってJAXAが宇宙開発を進めていましたが、国の機関ではなく民間に少しずつ渡していくという意思決定がされたことは大きな変化ではないでしょうか。


稲川さん:
アメリカから遅れてはいますが、これから民間による宇宙開発が話題になってくるし、進んでいくと思っています。

このようなフェーズで、2号機のメインスポンサーに投資信託の会社であるレオスさんがついていただいたことも、非常に大きな意味があると思っています。

我々はロケット開発を産業としてやろうと。そして産業を育てようというレオスさんのような会社が我々のメインのスポンサー様だということは、そのメッセージでもあると感じています。


ひふみ投信のマスコットキャラクター「ひふみろ」が機体に描かれたMOMO2号機の打ち上げは4月28日。レオスの社員研修を兼ねたこのフォーラムの前後に、実際にロケットを作っている工場を訪れて現場を見てきたそうです。

レオス・キャピタルワークスのメンバーも大樹町のインターステラテクノロジズの工場見学に訪れました。「応援したい人の仲間となって、心を一つにしてロケット打ち上げに挑みたいのです」(藤野)

投資とは、必ずしもお金が儲かるか儲からないかだけではなくて、この地域、この会社、この人を応援したいという気持ちを表し、行動すること。そして、今の時代はそれが〝儲かる〟一番の近道であるのだということを、今回のフォーラムを通して強く感じました。
ついに来週だね、ドキドキ。みんなの夢を宇宙に届けたいな!

北海道大樹町出身、在住の私も稲川社長がロケットにかける熱い思いにあらためて感動しました。そして、それを応援することも立派な「投資」なのだということを知って、投資に対するイメージがガラリと変わりました!


レオス・キャピタルワークスがメインスポンサーをつとめるMOMO2号機の打ち上げは4月28日(土)!

今度こそ宇宙へ!ひふみろ君と一緒に行きましょう!
現地の北海道・大樹町では、日本旅行とタイアップした見学特設会場が設けられています。

MOMO2号機・打ち上げ応援ツアー(日本旅行さんの特設サイトへ飛びます)

また、ひふみ投信のお客さま向けには、有料観覧会場の特別ご招待枠もご用意がございます。
詳しくはこちらから↓

MOMO2号機・ロケット打ち上げ観覧会場特別ご招待のお知らせ

取材・文:神宮司 亜沙美
北海道大樹町出身、在住。大樹町地域おこし協力隊を経て独立。北海道の作り手の物語を届けるオンラインショップ「北海道ローカルマーケット」を運営する他、ストーリーの届け手として企業の情報発信をサポートしている。

写真:澤田 希望