好きなことと儲かることが一体化する時代 -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.3 -

Rheos Now

3月31日、北海道・帯広市にて開催しました当社のイベント「ひふみフォーラム in 十勝」。

お二人目のゲストは、アウトドア総合メーカー 株式会社スノーピークの代表取締役社長・山井太さんです。

前回まで:
十勝にある「投資文化」を共有したい -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.1-
新たな挑戦を生み出し続ける、十勝という地域の力 -ひふみフォーラム in 十勝レポートVol.2 -

スノーピークさんといえば「人生に野遊びを。」というキャッチフレーズでお馴染みだね!
スノーピークさんは昨年、帯広市ポロシリ自然公園キャンプ場の指定管理を受託し「スノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールド」の運営を開始しています。十勝をアウトドアの聖地にしたいとおっしゃっている山井社長。アウトドアの達人から見た「十勝の魅力」、そしてスノーピーク流の経営の極意についてのお話です!(ゲストライター:神宮司亜沙美さん)
【登壇者プロフィール】
山井 太(やまい とおる)
新潟県三条市生まれ。1982年に外資系商社に入社し、86年にヤマコウ(現スノーピーク)に入社。オートキャンプのパイオニアとして日本のアウトドアを革新する。1996年社長に就任し、社名をスノーピークに変更。自身も熱心なアウトドア愛好家で、年に40?60泊はキャンプをしている。スノーピーク社は帯広市と包括連携協定を提携しており、十勝の豊かな自然資源を強みとした観光振興に取り組むパートナーとして、アウトドア観光による地方創生に取り組んでいる。

『スノーピーク、絶対買ってください』

スノーピークは2014年に東証マザーズに上場し、2015年に東証一部に指定替え。機関投資家の中で最初にスノーピークの株式の大量保有報告(全株式の5%以上)をしたのがレオスだったそうです。当時、レオスがスノーピークに投資するきっかけとなったエピソードがあります。

藤野:
当社の運用部の渡邉は、新規公開上場の良い会社を発掘する名人でして、もう「職人」というんでしょうか。その彼が「スノーピーク、絶対買ってください」と言うんですね。

「儲かるの?」って聞いたら、「それはわかりません」って言うんですよ。「え?わかんないの?それなのに投資しろというのか」ってよくよく話を聞いてみると、実はもともと彼自身が山を愛する人間で。

「スノーピークは日本の宝だから、儲かるか損するかに関係なく投資をしてください」と言うわけです。「万が一儲からなかったら、会社を辞めてスノーピークに入社します」とまで言ってきまして(笑)。

そのとき思ったのが、渡邉がここまで気持ちを込めてね、日本というかむしろ世界の宝だと熱弁するような会社が、儲からないわけない、と。それは、長期的にですね。結果的に、すごく儲かりましたし、今も投資しています。

今も投資をしているのはなんでかというと、彼らの考え方が好きだからですね。そう、好きだからです。


個人的にもひふみ投信に投資しているという山井さん。上場して一番良かったことは、という質問に「レオスのような機関投資家が世の中に存在していることを知り、こうして出会えたことです」と話します。
焚き火を囲んで語らう山井さんと藤野。キャンプの真価を体感してすっかり魅せられたようです!

アウトドアパーソンから見た十勝の魅力

山井さん:
フライフィッシングをするために初めて十勝を訪れたのは28年ほど前のことです。それから毎年2週間ほどは十勝に滞在しています。

これは十勝の札内川の写真なんですけど、見てください、透明度がすごいですよね。もう本当にきれいで、ずっとこの川に浸っていたい、ここからどこにも行きたくないというふうに思ってしまうほどの魅力を感じました。

いろいろな地域に釣りに行きますけど、世界でも稀にみる透明度の高い綺麗な川です。他には歴舟川もそうですね。


十勝の自然をワールドクラスと称する山井社長。昨年より帯広市の施設であるキャンプ場・ポロシリ自然公園を、スノーピークが指定管理を受け、スノーピークポロシリキャンプフィールドとして経営をしています。
スノーピークが受託運営する「スノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールド」。「このキャンプ場は、たぶん世界で一番いい芝生だと思います。テントの中でマットがいらないくらいフカフカの芝生です」(山井さん)

人生の中においても、通算するとかなりの年月を十勝で過ごしているという山井さん。生まれ育った故郷である燕三条地域の次に「マブダチ」が多くいるのが、この十勝なのだそう。

好きなことを軸として繋がった多くの十勝の仲間とともに、具体的に動き出したプロジェクトもあります。2017年4月に、アウトドアに特化し十勝のブランド化を目指す地域連携DMO「株式会社ディスティネーション十勝」を設立。十勝の魅力をパッケージにした真冬のグランピングツアーなど具体的な活動が動き始めています。

十勝のワールドクラスの大自然をフィールドとして、世界中のアウトドアパーソンが集まる日はそう遠くないかもしれません。

「好き」を仕事にする生き方と投資の関係

山井さん:
スノーピークはキャンプ場の中に本社があるんですね。それで、終業時間になると会社の庭、すなわちキャンプ場で焚き火が始まります。

最初はノンアルコールを飲んでいるんですけど、だんだんそれがビールになり、ワインになり、そして帰れなくなり、テントを張ってキャンプをします(笑)。

変な会社でしょ、と笑う山井社長の顔は本当に楽しそう。好きなことだけを仕事にしているから、仕事が楽しくてしょうがないのだと言います。

そんなスノーピークの本社には、ユーザーのみなさんもキャンプをしに来る。「スノーピーカー」と呼ばれるお客様と、とても距離が近いのがスノーピークの経営の特徴です。

スノーピークの「好きなことだけを仕事にする経営」についてレオスの藤野さんはこう語りました。


藤野さん:
「好きなことしかやってないから、仕事が楽しくてしょうがない」。そういう会社がちゃんと儲かるんですよ、実は。

わたしたちが投資をしている会社の中でも、社長が自分の会社が大好きで、社員が大好きで、社員が自分の会社が大好きだっていう会社に投資をするのが、一番リターンを得られる方法なんですね。

仕事は苦痛であり、歯を食いしばってイヤイヤやるものなんだ、というような考えの会社は、昔はよかったかもしれないけど、今の時代は儲からなくなってきている。ですから好きなことをやることと、ちゃんと儲けるということが、一体化しているということなんです。

レオスのメンバーたちも「好きなことで儲けよう」という話に引き込まれました。
キャンプ場のある会社、いいなあ!「好きなことだけを仕事にする経営」って、素敵だね!
投資をはじめようと思ったとき、どんな会社に投資をしたらいいのか悩む人も多いと思います。でも、「社員が楽しそうに仕事をしているか」という理由で投資先を選ぶのであれば、きっとイメージできるのではないでしょうか。そして実はそれが一番〝儲かる〟ことへの近道なのかもしれません。
ひふみフォーラムレポート・Vol.4に続く



取材・文:神宮司 亜沙美
北海道大樹町出身、在住。大樹町地域おこし協力隊を経て独立。北海道の作り手の物語を届けるオンラインショップ「北海道ローカルマーケット」を運営する他、ストーリーの届け手として企業の情報発信をサポートしている。

写真:澤田 希望