ひふみが世界株に感じるビジネスチャンス ―藤野英人インタビュー

Rheos Now

ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスは10月8日から、日本以外の世界株に投資する投資信託「ひふみワールド」の運用を始めます。このタイミングでの運用開始には、どのような意味があるのか。同社社長で最高投資責任者(CIO)の藤野英人に経営戦略の視点も交えて聞きました。

レオス・キャピタルワークス 藤野英人代表取締役兼最高投資責任者(CIO)

「満を持して」世界株運用へ

――ひふみワールドを始めようと思ったのはなぜですか?

お客様のニーズが強かったというのは大きいです。アンケートだったり、セミナーでのやり取りだったり、様々な形で世界株への興味関心が高いことを感じていました。ひふみ投信の運用が10年を超え、またそのポートフォリオの一部に海外株を組み入れ始めてから2年以上になりましたが、そこで十分にノウハウが蓄積された。創業当初から運用対象は日本だけで、というつもりはありませんでした。「満を持して」というのが、今の気持ちです。

――ひふみプラスも含め、公募ではひふみ投信マザーファンド1本でやってきたレオスが、世界株投信を始めるのは大きな決断だったと思います。何かきっかけはありましたか?

いわゆる「老後2000万円問題」が、最後の決断をするわたしの背中を押しました。人生が長くなり、老後にちゃんと生活していくにはそれなりのお金が必要です。長く働くか、コツコツ投資をして資産づくりするしかなく、国が何とかしてくれるという発想では通用しないと思っています。

投資の必要性に対する認識が生活者目線で高まる中、レオスは主として日本株だけしかやりません、あとは他から探してください、というのは不親切ではないだろうか、と。リスク分散をしたいという方、日本株よりも世界株に魅力を感じる方、様々なニーズがあります。運用体制が整ったタイミングでもありましたし、お客様に世界株の選択肢を提供することが、運用会社としての責務だと思いました。

もちろんわたしたち自身も、ひふみワールドで成長を目指せると見込んでいるからこその判断です。会社として成長し、会社のメンバーも成長し、より一層、ひふみ投信・ひふみワールドを磨き上げたいと考えています。

「ワクワク」こそ差別化できる理由

――海外株投信は他社も多く手がけていますが、レオスが参入しようと思った理由は何ですか?

日本の海外株投信のほとんどは、海外の運用会社に運用をお任せする外部委託で日本人自身が企業を取材することは少ないですね。ひふみワールドもひふみ投信と同様、「足で稼ぐ」ことを信条としていきます。日本人が自ら会社訪問して調査するというだけでユニークです。センスがあり知的好奇心にあふれる運用者たちが、あちこち飛び回ってワクワク議論しながら投資するような運用会社が、日本では極めて少ない。また、世界にあふれる新しい技術や経営者、企業をお客様お伝えしている会社は非常に少ない。そこにわたしたちはビジネスチャンスを感じています。

米国での取材(中央はシニア・アナリストの高橋亮)

――自ら足を運んで取材したことをお客様にお伝えすることにビジネスチャンスがあるとは、どういうことですか?

わたしたちは、ある意味でお客様の目となり耳となり、企業を調査します。そして、その体験を、セミナーでお客様に直接ご説明します。レポートなどの活字、動画配信など、あらゆるチャネルで、お客様のお金がどんな国に行き、どんな企業の役に立っているのかをお伝えします。お客様は、単に投信の保有者というだけでなく、文字通り「投資家」であってほしいと思っています。わたしたちと一緒にワクワクしてほしい。そういった体験も、リターンの一つであると考えています。これまでの投資信託が後回しにしてきた部分だと思います。「投資家」でありたいお客様はたくさんいると思います。だから、ビジネスチャンスなのです。

日本株運用との相乗効果

――そのように自ら足を運んで取材する姿勢は、お金の面でのリターンにもつながると考えていますか?

もちろんです。以前、電気自動車のテスラの工場を取材した運用部メンバーの意見を聞きました。そのメンバーは海外株調査が得意なアナリストではあるのですが、日本株の調査経験も長い。トヨタ自動車の極限まで効率化された工場を見学してきた目線で、テスラの工場を観察しているのです。鋭かったですね。

わたしたちの強みは、10年以上にわたる日本株運用の経験です。ビジネスはボーダレスになり、日本企業を取材しても海外ライバルの話は必ず出てきます。日本企業の仕入れ先や顧客企業は海外に存在します。日本企業の業績は海外の景気に左右されます。日本企業との比較において、海外企業を見るメリットを実感したのが、ひふみ投信に海外株を組み入れたこの2年間でした。もちろん、海外株の専門家も運用チームにはいますが、彼らにも日本企業の取材をしてもらっています。日本企業と海外企業の取材には、相乗効果があります。

――実際、相乗効果が出てきていますか?

はい、ひふみ投信で運用している世界株の過去の成績を見ると、S&P500などの指数を上回る成果を上げてきました。

どの国の会社でも、お客様と接し、商品を開発し、モノを売り、代金を回収し、利益を分配する流れは共通です。分厚い調査能力を生かしながら、海外企業に直接足を運び、日本株でのノウハウを世界株に適用していくことになります。

わたしたちの強みは、労力を惜しまず全国、全世界に足を運ぶスタイルです。財務情報だけではなく、服装や空気感も会社からのメッセージと考えています。それらを毎朝、運用部のメンバーでミーティングして話し合うだけでなく、コミュニケーションアプリに書き込んで情報共有しています。日本中、世界中を歩き回っている人が集めた情報をもとに議論する。情報の深さは、日本の運用業界の中でもトップクラスであると自負しています。

毎朝の情報共有ミーティング

世界株投信の決定版に育てたい

――運用を始める投資環境として、今のマーケット環境をどう捉えていますか?

投資をするときに、今のマーケットが良いタイミングなのか、悪いタイミングなのかは、わたしたちはあまり考えていないし、そんなことは誰にもわかりません。社会に貢献している企業を見つけ、長期投資するというのがわたしたちの一貫した立場です。新商品の開始に際しても、同じような考え方です。

――今回、ひふみワールドの運用責任者を務める湯浅光裕さんはどのような人ですか?

レオスの創業メンバーの1人で、ともに頑張ってきた信頼できるバディです。レオスでは、運用本部長を務め、世界最大級の機関投資家であるノルウエーの政府系ファンドの投資一任運用を担当しています。わたし自身は、ひふみワールドの運用では、CIOとして相談には乗りますが、日々の意思決定は全面的に彼に任せます。

――ひふみワールドをこれからどのような商品にしていきたいですか?

湯浅と話しているのは、あらためて、わたしたちが創業当初から抱いていた理想の軸は大切にしていきたいね、ということです。レオス創業時の16年前はお客様より販売業者主義というのがまかり通っていたので、我々が会社を作るのならば、お客様を第一に考えた会社で、投資の楽しさを伝えることができ、ワクワクするような商品を作りたい、と考えていました。

もうからないとワクワクしませんからリターンを出していくのが大事ですが、短期的には損することもある。長期的にもうかるような商品を作りたいというのが創業時から変わらない考えです。「世界にあふれるビックリ!をみつけにいこう」というのが、ひふみワールドのキャッチコピーです。

「世界株ならひふみワールドに投資すればいいよね」という存在に育てていきたいですね。世界株投信の決定版にしたいということです。ありがたいことに「主として日本株に投資するならひふみ」と思ってくださる方は出てきました。世の中の役に立つ会社に投資し、お客様の資産が増えていくということは、何にも代えがたい喜びです。一緒に世界を旅する仲間になっていただきたいと思っています。

※文章中の過去の実績は、将来の結果をお約束するものではありません。
※投資信託は、預金等や保険契約とは異なり、金利や相場等の変動により元本欠損が生じる可能性があります。投資信託のご購入の際には、「投資信託説明書(交付目論見書)」の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。


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