ひふみの社会科見学inテラ株式会社

ひふみの社会科見学レポート

日本人の2人に1人が発症し、日本人が亡くなる原因で最も多いと言われる「がん」。
この「がん」の治療法として、近年注目を集める「がん免疫療法」と呼ばれる治療法をご存知でしょうか?

がん免疫療法は、手術、抗がん剤、放射線などの外部の力を使わずに、人間が本来持っている免疫力(細胞やウィルスなどの外敵を排除する力)を利用してがん治療を行うため、辛い副作用がほとんど無い治療法として注目を集めています。

今回の社会科見学では、「がん免疫療法」のひとつとして知られる「樹状細胞ワクチン療法」の技術・運用ノウハウを医療機関に提供している、テラ株式会社(以下:テラ)さんにご協力いただき、創業者・代表取締役社長の矢﨑社長に「テラの創業ストーリー」をお伺いし、実際にがん免疫療法を行う現場を見学させて頂きました。

~テラの創業ストーリー~
テラ創業前の矢﨑社長は、大学病院で外科医として働いていました。

休日は年に数えるほどしかないという程、多忙な日々を過ごす中で「このまま外科医を続けて、あと何人の患者の命を救えるのだろう?」と思うようになったそうです。

“医師として一人ひとりの患者と向き合うことは、やりがいのある大切な仕事です。しかし、「自分だからこそ実現できる患者への貢献の仕方もあるのではないか?より広い世界で、より多くの人の役に立ちたい」と考え、医師を辞め、自ら事業を興すことを決意しました。”

そんなとき、雑誌に掲載されていたバイオベンチャー(遺伝子解析技術を用いた創薬系のベンチャー企業)の記事を読んで“これだ!”と思い、飛び込みで入社します。

入社後は、企画・財務・予算管理・経営企画の策定といった仕事に取り組む傍ら、細胞治療に関連する新規事業を社内外に提案する業務も担当していました。そこで「がん免疫療法」のひとつとして知られる「樹状細胞ワクチン療法」に出会います。

“人間が本来持っている免疫力を利用してがん細胞を排除する樹状細胞ワクチン療法は、副作用がほとんどない治療法です。外科医として多くのがんと関わった経験から「この技術は事業化できる。事業化することで一人でも多くのがん患者さんを救い、社会に貢献したい。」と直感しました。”
そして2004年6月「医療を創る」という企業理念を掲げテラを創業します。
ひとりでも多くのがん患者の命を救いたいという気持ちが、矢﨑社長を突き動かし、テラの創業に至ったんだね。
創業直後は、仲間と共に樹状細胞ワクチン療法の技術を提供する医療機関探しに奔走する日々が続きます。そして、創業から約1年後の2005年6月「セレンクリニック東京」に初めて樹状細胞ワクチン療法の技術が導入されることが決まり、事業化の第一歩を踏み出すことになりました。
テラさんの技術を最初に導入し、樹状細胞ワクチン療法事業化の第一歩を踏み出すきっかけとなったセレンクリニック東京の森田院長に樹状細胞ワクチン療法についてご説明頂きました。
“樹状細胞ワクチン療法とは、人間の体内にある免疫細胞の中でも司令塔のような役割を持つ樹状細胞の働きを利用した治療法です。”

血液中の白血球には様々な役割を持つ免疫細胞が存在し、からだの中に侵入してきたウィルスや細菌などから、私たちの命を守ってくれています。

なかでも樹状細胞は、病原菌など体内に入ってきた異物の特長を捉え、リンパ球(異物に攻撃を加える役割をもつ免疫細胞)に異物への攻撃を指示する役割を持っています。

樹状細胞ワクチン療法では、これらの特長を活用して、樹状細胞にがん細胞の特長を記憶させることで、効率的にがん細胞に攻撃を加え、がんの治療を行っていきます。

まずはこちらの機械を使って患者さん本人の血液から樹状細胞のもととなる単球(白血球の一部)を取り出します。

そして、クリニック内の細胞培養施設で、採取した単球をもとに3週間ほどかけて樹状細胞を生成し、樹状細胞にがん細胞の目印を記憶させることで、樹状細胞ワクチンが完成します。

こうして生成された樹状細胞ワクチンを2週間に1回のペースで患者さんに注射することで治療を行います。

患者さん本人の細胞を使ってワクチンを生成し治療を行うから、がん治療に伴う副作用がほとんど報告されていないんだね。
副作用がほとんど無いと言われる樹状細胞ワクチン療法ですが、公的な保険が適用される標準治療に認定されておらず、治療費は患者さんの全額負担となってしまいます。
テラさんでは現在、「ひとりでも多くの人の役に立ちたい」という思いで、樹状細胞ワクチン療法を公的な保険が適用される標準治療にするための活動を推進しているそうです。
保険が適用されるようになると、より多くの患者さんの命を救える可能性が広がるね。 ご協力頂いたテラ、セレンクリニック東京の皆さま、参加してくれたお客様、ありがとうございました。