西条の酒蔵に学ぶ 伝統と冒険心 -全国ありがとうキャラバン開催レポート-

ありがとうキャラバン

11月2日(金)、ありがとうキャラバンを広島県で開催しました。 

参加メンバーは運用部の小野、総務部の荒木、マーケティング・広報部の松永、そして今回のレポーターを担当いたします運用部・シニア・アナリストの八尾の4名です。

【レポータープロフィール】
八尾 尚志(やつお ひさし)

1990年、和光証券(現みずほ証券)入社。 三菱証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て、2004年、オプティマル・ファンド・マネジメントに入社。同社では、インベストメント・アナリストとして活躍、約7年半に渡り、年間400-500社の取材を行なった。

2013年、レオス・キャピタルワークス入社。

企業調査やセミナーで全国をあちこち出かけている八尾さんだけど、広島はよく来ているところ?

仕事で広島にはこれまで年に数度は訪れているけれど、すぐに次の目的地に向けて移動することがほとんどでした。なので、今回のありキャラをとても楽しみにしていました。

酒の街、西条が生まれた理由

今回は東広島市の西条を訪れました。西条は毎年10月に「酒まつり」が開かれ全国から数十万人の観光客が訪れる「酒の街」です。兵庫県の灘・京都府の伏見とともに「日本三大銘醸地」と称されています。

私は学生時代を神戸・灘で過ごしたこと、また親族が京都・伏見出身であることなど、不思議と日本酒どころに縁があることから、西条は酒どころつながりで親近感を感じていました。

ふふふ、八尾さんはお酒、好きだもんねぇ。

大好きです!でもお酒を飲みにいくための訪問じゃないよ。実は酒づくりの現場にはビジネスのヒントがたくさんあるんじゃないかと思っていてね。今回は蔵元を訪問して、そのあたりの話を伺ってきました。


西条の街には8の蔵元が建ち並んでいます。そのなかで今回訪問したのは「西条酒まつり」でも大人気の銘柄「賀茂泉」でお馴染みの賀茂泉酒造株式会社さんです。

同社取締役副社長の前垣壽宏さんにお話をお伺いしました。前垣さんは日々日本酒のおいしさを伝えるために日本全国を飛び回っていらっしゃいます。

「日本酒はどのような歴史を辿ってきているのでしょうか?」そんな質問から取材が始まります。

以前の日本酒造りは雑菌の少なさや農閑期の出稼ぎによる労働力確保の観点から、冬場の酒造りが当たり前でしたが、最近は冬場の環境を人工的に再現できるようになったこともあり、必要な時に必要な分量だけを生産する「製造業的」な発想になっているそうです。

酒造りは「醸造・発酵の製造工程」と「ボトリング&販売の工程」の二つに大きく分かれます。いわば自然の工程に人間の手による工程が加わったものといえます。

またお金との関わりというところでは、日本酒造りは「徴税手段」とも密接に絡んでいます。これは江戸時代までのコメ経済(年貢)から明治時代以降に貨幣経済へ移ったことに伴って、課税対象がコメから酒に変わったということです。

それによって「地産地消」だった存在から、安定して徴税できる「全国画一的」なものが好ましくなるわけです。太平洋戦争によるコメ不足によって税収不足を恐れた官僚が醸造アルコールを使用した「アル添酒」を認め、戦後は原料不足により醸造アルコールを使ってお酒を3倍に薄める「三増酒(三倍増醸清酒)」が生まれました。税収確保のために導入されたのが「級別」(特級、1級等)です。

その後、コメ余りの時代に突入したことでようやく蔵元への米の割り当て制度もなくなり、全国で自由に日本酒造りが始まります。

そして地酒ブームや吟醸酒ブームを経て、最近は特にオリジナリティに富んだお酒が作られるようになったわけです。

西条は周囲を山に囲まれた盆地。この盆地特有の気候は酒造りの発酵や貯蔵に適していますし、周囲の山からもたらされる伏流水が井戸水となって湧き出ており、この地で酒造りが発展していったということです。それぞれの酒造は、今も井戸から汲み上げた名水を仕込み水に使っています。

西条の酒がおいしい秘密を、前垣さんにご案内いただき現場でさらに聞いていきました。

西条で作られる日本酒は、それまでにはなかった「麹をしっかり作り発酵温度を低くする」という独自の製法で作られており、旨味が強く、ふくよかな味に特色があるそうです。

それに地元の企業によって開発された「米を磨く」という技術、さらに鉄道開通が加わって大阪などの大消費地へ出荷することができるようになり、品評会の上位を独占するなどして西条の日本酒は大きく飛躍したそうです。

まさに「ソフトとハードの融合」が生んだモノといえます。

でも、どうやって高い品質を保つのでしょう?
またこれからどうやって売上を上げていくと考えているのでしょう?

アナリストとしてはとても気になるところです。

品質を管理するために数値化できることは数値化する、でも最終的にはやはり「味を利いて」確認する。ただ、前年の延長線上に同じことだけをしていてもダメで、より良いものを作り続ける、その革新性が信頼に繋がっていくそうです。これは私たちの運用の考え方に通じる部分があると思いました。 

これからの売上については、まだ海外に拡大余地が大きいと考えているとのことでした。例えばフランスのワインはその販売量の約30-40%がフランス外で販売されていると言われますが、日本酒業界で見てみると海外売上はまだ2%に過ぎません。現地でしっかり品質管理を行い、自分たちの言葉でブランドを作っていく。そのためには大切なのは「間口を狭めるのではなく広げること」、そんな風に考えていらっしゃるそうです。

日本酒の業界が最近元気になっているのは、よりよいモノを、広く届けよう、という意識の表れなんだろうね。

常日頃から幅広いお客様に「投資の楽しさや大切さ」をお伝えして、「日本を根っこから元気にしたい」と思っている私にとっては、前垣さんの「間口を狭めるのではなく広げること」という言葉がとても心に残りました。同じものを作り続けるだけではだめで、冒険心を加えて新しいモノを生み出していくことの大切さを、改めて心に刻みました!

賀茂泉酒造さん、どうもありがとうございました!
酒蔵取材が終わった後はみんなで「日本酒アイス」を食べて……

広島のご当地グルメ、汁無し坦々麺を堪能し……

お客様にお会いすべく、広島市のセミナー会場に向かいます。

つながる想いに感動

ありキャラセミナーは、TKPガーデンシティPREMIUM広島駅前で開催されました。 

セミナーでは祝日の前日、それも遅い時間にもかかわらず、ひふみ投信を以前から保有いただいているお客様や初めて私たちのセミナーに参加されるお客様など、30名以上の方にお集まりいただきました。

スピーカーは八尾、小野です。

私たちの投資に対する想いだけでなく、広島には素晴らしい会社がたくさんあること、そしてその会社を皆様の地元愛が育てていること、そして賀茂泉酒造さんでお聞きした西条での酒造りがソフトのイノベーションがハードのイノベーションと融合したことで始まったことや、ブランディングの重要性などをお伝えししました。

セミナー終了後も多くのお客様が残っていただき、熱心に質問をしていただきました。

とりわけ驚き、そしてとても嬉しかったことが……

以前に藤野の講演を聞いて大変刺激を受け、それから一念発起してご主人のお仕事を手伝われながらIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)のライセンスを取得されたお客様がお越しになられたことです。その方が今回は自分のお客様をお連れしてセミナーに参加されました。「あの時に話を聞かなければ、今はなかったんですよね」とお話くださるお客様の笑顔が本当に印象的で、私も楽しくなる瞬間でした。

それは嬉しい! 
こんなストーリーが全国にたくさんあるんだと思うと、ワクワクしちゃうね。

私たちの取り扱っている商品はそもそも手触り感のないものです。またそれ以前に「投資」そのものをともすれば難しく感じてしまう方が多くいらっしゃいます。だからこそ、そこに込められた私たちの想いを言葉で伝えることの重要さを日々感じているのですが、今回はその思いが通じたようで本当に嬉しかったです。これからも引き続き投資の大切さを伝えていきたいと思っています。
ありがとうございました!(レポーター: 運用部 八尾 尚志)