代表取締役会長兼社長・藤野英人に聞く!
求める人材は「希望と野望がある人」

PROFILE

藤野 英人

代表取締役会長兼社長

1966年富山県生まれ。野村投信投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントを経て、2003年にレオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。「ひふみ投信」シリーズファンドマネージャー。投資啓発活動にも注力する。JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学 非常勤師、叡啓大学客員教授。一般社団法人投資信託協会理事。 近著に『おいしいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス』(日本経済新聞出版)

鈴木 勇二

人材戦略室長

1969年生まれ。大学卒業後、株式会社パルコにて新規開店準備などに携わる。その後ヤフー株式会社にてEC営業、ビジネス開発を経て、人材採用部部長に就任。2020年にレオス・キャピタルワークスに入社、人事部長を経て2021年6月より現職。採用、教育・研修、人事制度企画・立案などを担っている。

2022年に創業19年を迎えたレオス・キャピタルワークス。代表取締役会長兼社長の藤野英人に、レオス創業にかけた思いから、未来へ向けた戦略と取り組み、共に働きたい人物像まで、縦横無尽に語ってもらいました。聞き手は人材戦略室長の鈴木勇二が務めます。

「資産運用業界のイノベーター」として成長

鈴木:2022年4月に、レオス・キャピタルワークスは創業19周年を迎えました。藤野さんから見て、レオスはどういう会社でしょうか。

藤野:ひと言で表現すると「資産運用業界のイノベーター」。新しいことにどんどん挑戦していく気風に満ちた会社です。お客様のためにもっと創造的なことをしたい、資産運用業界をもっと楽しく盛り上げていきたい、という意欲のある人材が集まり、進取の精神あふれるレオスのカルチャーをつくり上げてきました。

鈴木:2021年5月には、レオスが運用する資産残高(※)が1兆円を突破しました。資産運用業界の中で現在、どのような位置にあると思いますか。※「ひふみ」シリーズと国内外の年金基金運用等の合計

藤野:ソフトバンクグループの孫正義社長が起業したとき、「いつか必ず、売り上げも利益も1兆(丁)、2兆(丁)と豆腐屋さんのように数えられる会社にしてみせる」と決意したエピソードは有名ですが、レオスがついにそうした規模感に到達したことを感慨深く感じています。運用資産残高については、国内の独立系資産運用会社としては最大規模の水準であり、毎月の資金流入量でもトップクラス。資産運用業界では、中堅から大手への仲間入りをにらむポジションに移行し、非常に存在感のある運用会社になってきたと自負しています。

鈴木:独立系運用会社の中でトップを走る存在にまで成長したということですね。これを支えたのは、やはりひふみシリーズの商品力でしょうか。

藤野:「投資信託」は知らなくても、「ひふみ」は知っているというお客様は、結構いらっしゃるんですよね。国内の投資信託の中で、「ひふみ」というブランドが一般的に浸透したことが大きいと思います。ひふみ投信マザーファンドは日本株アクティブファンドとしてアジア最大級の規模に成長し、ひふみシリーズ全体で見れば推計80万人から100万人ほどのお客様に保有してもらっています。つまり、ざっくり言うと、日本人の100人に1人くらいが、「ひふみ」とアクセスしている計算になるんですね。

鈴木:ひふみシリーズの認知度が高まり、企業としても成長を続ける中で、その礎となっているのが、「資本市場を通じて社会に貢献する」という企業理念です。

藤野:一見、シンプルなメッセージに感じますが、実はこの企業理念が決まるまで半年ぐらい時間をかけて、創業メンバーで議論を重ねたんですよ。その甲斐あって、レオスという会社が何を目指し、どういうことにフォーカスしているのかをズバリと表す理念となりました。一つは、わたしたちの仕事が、株式や債券などの金融取引を行なう「資本市場」に特化したものであること。そしてもう一つは、わたしたちはたとえ儲かることであっても「社会に貢献できる要素がなければ絶対にやらない」ということです。創業当時は主に日本の成長株への投資を手掛けていましたが、投資対象が世界株に広がり、現在は国内外の債券、さらに未上場の会社へと対象を広げています。会社の規模が大きくなるにつれ、わたしたちの企業理念が内包するものも拡大していることを実感しています。

鈴木:この理念を実現する際の課題は何でしょうか。

藤野:一つは、金融知識の不足から「投資は怖い」と思い込んでしまっていたり、「投資に回す十分な資金がない」と諦めたりしている方々に、どのようにアクセスしていくかということです。わたしたちは、あらゆる人々が金融サービスの恩恵を受けることができる「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」を目指しています。そのために、例えば初心者でも少額から投資しやすい商品の設計や、より多くの方々に商品や情報を届けるための工夫、分かりやすい投資教育など、できることはすべてやっていく。もう一つは、それを実現するための優秀な人材の採用です。工場を持って「モノづくり」をするわけではないわたしたちにとっては、「人材がすべて」。意欲のある優秀な人たちが、能力を最大限に発揮できるよう、企業文化をはじめ、待遇や環境、人事評価をより魅力的なものにしていきたいと思っていますね。

鈴木:様々な人に投資についてお伝えするという点では、YouTubeの公式チャンネル「お金のまなびば!」を開設したり、初心者向けのセミナーを開催したりするなど、メディア戦略にも力を入れています。

藤野:欧米と比べて日本では、投資というと「怖い」「難しい」「損するのが嫌だ」「お金がないから関係ない」など、後ろ向きの意見がまだまだ多いですね。ファイナンシャル・インクルージョンを実現するためには、こうしたネガティブなイメージを払拭し、知識の底上げをする必要があります。そこで重要になるのが、メディアを通じた情報発信です。わたしたちが書籍を執筆したり、各種メディアの取材を受けたりすることで、投資の魅力について様々な人に伝えていくことができる。また、幅広い方々に投資について理解していただくためのツールとして、YouTubeなどの動画配信も活用しています。「お金のまなびば!」では、レオスのメンバーが、お金をテーマにあらゆる角度から分かりやすく解説し、ウェブサイトではひふみシリーズや経済について身近に感じることができるコンテンツを充実させています。

金融業界NO.1の「働く人の雰囲気の良さ」

鈴木:創業時は4名からスタートし、ついに社員数は100名を超えました(2022年1月時点)。社員にはどういう思いを抱いていますか。

藤野:新しく入社した社員全員に「レオスに入社してどうですか」と、私が自らインタビューしているのですが、皆さん、口をそろえて「社内の雰囲気がとてもいい。親切な人が多くて、人間関係がいい。」と言ってくれます。実際に、それを裏付けるデータもあるんです。Sansanが提供する「ECS for アカデミア」という学生向けの企業研究レポートがあるのですが、これは名刺アプリを通じて、企業の印象を調査し指標化したものなんですね。評価項目は「ブランドの魅力」「製品・サービスの有用性」「人の好印象」の3項目ですが、金融系の企業103社を調査したランキング(※)だと、レオスが「人の好印象」の項目では他を引き離してダントツの1位、総合ランキングでも1位だったんです。クリエイティブで専門性が高く、さらに人柄が良い社員が集まっている、ということは当社の大きな強みですね。

※Sansan株式会社「Eight Company Score (ECS)」2021年上半期より
https://hifumi.rheos.jp/information/media/2021/20211029.html

鈴木:テック業界では、「すごく優秀で仕事ができるけど、嫌なやつ」のことを“ブリリアントジャーク”と呼んだりしますが……。

藤野:そういう「ダース・ベイダー」タイプはレオスにはいません(笑)。採用するときは仕事の能力だけでなく、人柄も重視しています。例えば、大事な会議に遅れまいと急いでいるとき、道でおばあさんが倒れていたとしましょう。私が一緒に働きたいと感じるのは、たとえ会議に間に合わなかったとしても、救護することをためらわず真っ先に走り寄るような人です。

鈴木:思いやりがあり、親切な社員が多いことは私も実感しています。その中心にあるのが、2018年につくった「オーナーシップ」「一流的視座」「一日一笑」という、3つの「レオス・バリュー」ですね。

藤野:新たな社員が増えていく中で、わたしたちの考え方や行動規範となるものを共有できるよう、オフサイトミーティングや研修を重ねて練り上げました。これも半年以上かけて皆で考えたものですが、結果的に非常にレオスらしさのあるユニークなものになったのではないでしょうか。様々な課題を自分ごととして考える「オーナーシップ」、いつも“最上”を目指す「一流的視座」など、すべて重要なバリューですが、中でも気に入っているのは「一日一笑」。19年の歴史の中で、何度もピンチを乗り越えられたのは、社員たちのユーモアとスマイルのおかげ。いつも笑っていられるような職場環境をつくり、フラットで柔らかなコミュニケーションを心がけたいと思っています。

鈴木:レオスでは、より柔軟な働き方ができるような制度を整えることにも注力してきました。「コアタイムなしスーパーフレックス制度」や「専門業務型裁量労働制」の導入など、働き方改革も進めています。

藤野:朝型・昼型・夜型の別はもちろん、同僚とワイワイ話すことで良いアイデアが浮かぶ人、反対に一人で黙々と仕事するほうがはかどる人……など、パフォーマンスを発揮できる環境は人それぞれ。私自身が、人に強制されて何かをすることや、「チームワーク」という名の下に潜む体育会系的な同調圧力が苦手なタイプなんです。時代の変化に沿った多様な選択肢があり、自分に合った働き方を自由に選べる環境でこそ、人は存分に力を発揮できるという思いが根底にあります。

鈴木:在宅ワークについても、新型コロナウイルス感染症が拡大する前から取り入れていましたね。

藤野:在宅ワークは2019年から実験的に進めていました。「コアタイムなしスーパーフレックス制度」などでもカバーできない、社員のライフステージの変化にも対応できるのではないかという期待があったからです。結果として、緊急事態宣言が発出された際も、社員全員がスムーズに在宅ワークに移行することができました。今後も在宅・オフィスなど働く場所を自由に選択できる「ハイブリッドワーク」を推進していく予定です。

鈴木:大変自由度が高い職場環境ですが、レオスの社員にはどのように働いてほしいですか。

藤野:「去年よりも今年のほうが成長している」と社員が実感できるよう、キャリアアップの機会を与えられる会社でありたいと思っています。だから、例えば「起業したい」「欧米で仕事したい」「転職したい」など、新たなステップに進みたいと考える社員がいるなら、会社としては応援したい。別れに対する寂しい気持ちはもちろんありますが、相談されたときは「いいね! チャレンジしてみたら」と快く背中を押すようにしています。一方で、いったん退職した社員がレオスに戻ってくることも大歓迎。他の企業とも比較した上で「やっぱりレオスで働いて良かった!」と感じてもらえるほうがうれしい。それには、やはり社員に選んでもらえる魅力ある会社でないと。仕事のやりがいや面白さはもちろん、働きやすさや待遇面でも進化していければと思っています。社員には、「業界最高水準の給料で、ストレス半分の会社を目指す」と言っています。

大きなチャンスを秘めた資産運用業界

鈴木:資産運用業界の展望については、どう見ていますか。

藤野:運用会社として、わたしたちは社会的にも大きな責任を負っていると思います。今、日本国民の個人金融資産残高は約2,000兆円と言われていますが、その半分である約1,000兆円が現預金であり、投資信託の比率というのはたった4.5%(※)に過ぎません。欧米には、個人の金融資産が株式市場や債券市場を通じて企業のイノベーションや成長を支え、その結果、個人資産もさらに拡大するという投資の好循環があります。日本の場合は、それが停滞しているわけですが、逆に言えばそれは「伸びしろ」であるとも言えます。なんの価値も生まずにゼロ金利で眠っている日本の現預金1,000兆円を刺激して動かすことで、社会が元気になり、個人も豊かになる。こんなに大きなチャンスを秘めた業界は他にないと思っています。

※2021年第三四半期の資金循環(日本銀行調査統計局)より

鈴木:できることはたくさんありますね、夢が広がります。5年後、10年後にレオスはどんな会社になっているでしょうか。

藤野:ひふみシリーズを成長させ、お客様の期待に応えつつ、新しい商品やサービスも拡充していきたいと考えています。1,000兆円もの現預金をどうやって投資に振り向けてもらうのか。我々には無限のチャンスが与えられているし、チャレンジしがいがあることです。

鈴木:最後に、「レオスで働いてみたい」と考える皆さんにメッセージをお願いします。

藤野:徒手空拳でスタートしたレオスも創業19年を迎え、資金力、ブランド力、優秀な人材、働きやすい環境など様々な“道具”がそろいました。自分の能力を十分に発揮し、若手でも新しいことができる舞台の準備はできている。たくさんのチャンスと様々な道具をどのように組み合わせて生かすかは、あなた次第です。ただし、レオスでは「指示待ち」の姿勢では成長できないでしょう。仕事を通じて実現してみたいことがある、新しいことにどんどん挑戦していきたい——そうした「希望と野望」がある人にはぜひ、レオスを選んでいただきたいと思います。

※所属・業務内容は、取材時点の情報です。

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