ひふみシリーズ 最高投資責任者(CIO)の藤野英人よりメッセージ

ひふみは「投資」と「運用」の両面を持つ

わたしたちの仕事は「投資運用業」です。「投資」と「運用」は一緒くたに捉えられがちですが、その意味は異なります。

 

「投資」とは、個別企業をよく見たうえで長期的に伸びていくと考えられる企業にお金を預け、企業の成長とともに株価がのびていくことに期待することです。成長企業に資金を投じることはその企業を応援することであり、企業が期待どおり成長すれば利益が上がってその分だけ株価が上昇し、お客様に還元できます。それによってお客様の資産が増え、消費も増える――これが、「ひふみ」が目指す投資です。

 

他方、「運用」という言葉は「運」を「用」いると書くように、運が占める要素が大きいといえます。今日買った株が明日値上がりするかどうかは、マーケットがどう動くかにかかっていて、ほとんど運次第です。とはいえ努力をすれば、ある程度マーケットの動きを読むこともできます。その動きを利用して株を売買するのが「運用」です。

 

「ひふみ」については、「地味だけれど地道に成長していく企業を見つけ、その株を買って長く持ち続けるという姿勢が素晴らしいですね」といわれることがよくあります。これはまさに「ひふみ」が行なっている「投資」の特徴です。しかし一方で、「ひふみ」はマーケットに向き合いながらダイナミックに株の売り買いもしており、これが「運用」の特徴になっています。

 

「ひふみ」には、実は多様な顔があります。「成長企業に長く投資する」ことをベースにしながら、変化するマーケットに対応してベストを尽くすというのが、わたしたちが行なっている「投資運用業」なのです。

マーケットと向き合って「運用」するということ

「ひふみ」はよく中小型株型の投資信託だといわれます。確かに、「ひふみ」の運用をスタートしたとき、組入銘柄の中心は小型株でした。また、「これから伸びる企業」は小さい企業に多く、「ひふみ」は現在もそういった企業にたくさん投資しています。

 

ですが、「ひふみ」が中小型株型だというのは“8割くらい正解”というところで、完全に正しいとはいえません。実際は、企業の大小に関係なく、成長する企業であれば投資するというのが「ひふみ」の基本的なスタンスです。大型株にチャンスがあると見れば、積極的に組み入れます。

 

たとえばアベノミクスがスタートしてから半年ほどは、組入上位銘柄を大型株に切り替えて運用していました。これは、世界中のお金が日本の株式市場に流れ込む局面では、大型株が買われて値上がりしやすいからです。

 

マーケットの状況に合わせ、超小型株から大型株まで目一杯使って運用します。この「マーケット全体を使い切る」というのがわたしたちの強みだと思っています。

 

マーケットが大きく下がりそうなときには株を売って現金比率を引き上げ、先行き好調なときは現金比率を引き下げる運用で「守りながらふやす」のも「ひふみ」の特徴です。

 

たとえばギリシャショックの際には、「ギリシャがEUから離脱すれば世界中の株が暴落する」といわれていましたから、現金比率を30%程度に高めて備えました。結果的にギリシャのEU離脱はなく、株価が戻ったので、そのときには現金比率を10%以下まで引き下げました。

 

また、東日本大震災の直前には、「ひふみ」は現金比率を30%近くまで引き上げていました。もちろん、震災を予測していたわけではありません。震災前、たまたま株価が大きく上昇したため、売却を進めていたのです。震災後、株価が大きく下落したときは積極的に買い進め、株の比率をほぼ100%に引き上げました。

 

わたしたちが「ひふみ」をつくったのは10年前の2008年10月1日でした。リーマン・ショックの中でスタートし、大震災もあり、アベノミクスによる株価の回復もありましたが、総じて苦難の多い10年間だったと思います。しかし、これまで結果を出してこられたのは、しっかりと成長する企業に投資できたことはもちろん、変化するマーケットに対応して運用をきちんとやってきたことも大きいと思っています。

運用資産が大きくなった「ひふみ」のこれから

「ひふみ」の仲間は増え続け、最近は、「規模が大きくなると運用が難しくなるはず。これから『ひふみ』はどうなるのか」と心配する声もよく聞くようになりました。このことについても、少しご説明しておきたいと思います。

 

この業界では、「運用資産3000億円がひとつの壁」といわれていました。それは、過去の日本株投信では運用資産3000億円を超えるとそこから残高が増えなくなり、パフォーマンスが落ち、結果として残高が減少に転じるという現象があったからです。ですから、過去に3000億円を超えた日本株投信に何が起きたのかをよく見たうえで、そこから真摯に学ばなければならないと思っていました。

 

自分なりに分析した結果、思い至ったのは「3000億円の壁」には大きな意味はないということでした。

 

3000億円を超えたとき、金額に目を奪われ、「たくさんお金が集まったけど、どうしよう?」という「How」で対応しようとすれば、運用者は自分を見失ってしまうでしょう。

 

しかし、重要なのは「How」ではなく「どうありたいか?」、つまり「Be」なのではないか、と気付いたのです。

 

「ひふみ」を通じてわたしたちがやりたいのは、北海道から沖縄までお客様よりお預かりした資金を日本中の素晴らしい企業に長期的に投資して日本を元気にすることであり、それに集中すればいいだけのことだ、そうフォーカスできた瞬間に、「3000億円の壁」の悩みはなくなりました。

 

いま、わたしたちは「運用が難しい」とか「大変だ」とは思っていません。一般的には、「運用というのはタイミングを捉えるもの。資産規模が大きくなるとすばやく動けないから運用が難しくなる」というのが多くの人の意見です。

 

確かに現在の規模では、マーケットの中で忍者のような動きをするのは難しいといえます。しかしもともとわたしたちが目指しているベースにあるのは、「成長が期待できる企業を長期で応援する投資」です。その意味で、資産規模の拡大は、3年、5年といったスパンで成長企業に投資するスタンスがブレなくなるという本質的な改善をもたらしたと思っています。

 

実際、「3000億円の壁」を突破したあとも「ひふみ」に資産の流出は起きず、運用も崩れませんでした。これは、本来あるべきやり方に純粋に取り組めていることが大きいと思っています。

 

「ひふみ」はいま230銘柄ほどに投資しており、1銘柄あたりの保有割合が平均で0.5%弱と非常に小さいという特色があります。このように分散投資をしていると、ある銘柄が大きく値上がりしても基準価額へのインパクトは出にくい一方で、1銘柄の株価が半分に下がってもそれほどの打撃にはなりません。

 

投資をしていれば、個別のケースで「これは失敗だった」ということは必ずあります。しかし大切なのは、失敗を恐れずリスクを取り、成長が期待できる企業に投資し続けることです。時に失敗があっても、より多くの成功があれば全体としてリターンをしっかりと上げていけるからです。「ひふみ」は、たとえ失敗しても尻込みすることなく、挑戦して頑張る企業に投資し続けます。

 

もちろん、今後も勝つ運用にはこだわります。「ひふみ」の基準価額が最高値をつけて「長期で持っていてよかった」と思っていただけるよう、全力を尽くしていきます。

 

 

2018年10月 

代表取締役社長・最高投資責任者 藤野英人